たまには更新しろ日記

『竜騎士の飛槍烈戦』補遺

2014/10/18

自作のキャラ名はたいてい語感優先で付けてしまうのですが、『竜騎士の飛槍烈戦』は珍しく(笑)とある作品から多くをいただいています。せっかくなのでちょこっと元ネタを解説してみます。

以下、致命的なネタバレは含まないはずですが、本編未読の方は注意。

英国の作家ウォルター・スコットが1820年に発表した『アイヴァンホー』という長編小説があります。中世イングランドを舞台にした作品で、架空の主人公を歴史上の出来事に絡ませた物語の元祖とも言われています。現代においてはこうした手法は時代劇から漫画まで山ほど見かけますが、案外最近のものなんですな。

さて中世イングランドを舞台にしているからには、登場するのは王様や騎士やお姫様です。内容を一言で表すとこんな感じです。

暴れん坊陛下VS鼠小僧! 古の大王の血を引く姫君に魔の手が! 若き騎士との恋の行方は……!?

どこの二時間ドラマかと書いてて自分で思いましたが、嘘は言ってない……と思う。たぶん。(笑)

十一世紀、イングランドの国は大陸からやってきたノルマン人に征服された。それから百年、土着のアングロ・サクソンの人々は今なお服従を強いられている。
やがてヨーロッパに十字軍の嵐が吹き荒れ、ノルマン人のイングランド王リチャード一世もまた十字軍に参戦したが、あろうことかイングランドへの帰還中に敵国に捕らえられてしまった。国王不在の隙を突いて王弟ジョンが実権を握るべく暗躍する。そしてサクソン人の人々は……。

背景となる中世英国史はこのあたりとか幸村誠先生の『ヴィンランド・サガ』とか読んでください。(笑)『ヴィンランド〜』はノルマン・コンクエスト(ノルマン人がイングランド王位を得た出来事)より少し前が舞台です。まああの漫画、アングロ・サクソン人は雑魚扱いでさっくりアシェラッドに殺されてたりするけど……。

ともあれ、やっと(!)キャラ紹介。

ウィルフレッド・オブ・アイヴァンホー
主人公。サクソン人の地主の息子だが諸々あって父親に勘当され、ノルマン人の王リチャード一世に騎士として仕えることになる。盾に『勘当騎士』とか書いて馬上槍試合に出場してしまう自虐的中二センスの持ち主だが、それ以外は案外普通というか苦労人。ぶっちゃけ影が薄い。十字軍にも参戦した歴戦の騎士だが、本編の半分くらいは負傷退場して寝てる。それで良いのか主人公。
なお物語のタイトルともなっている「アイヴァンホー」とは彼が賜った領地の名であり、「アイヴァンホー領のウィルフレッド」という意味。物語の舞台である十二世紀はちょうど貴族が領地を姓として名乗り始めた時期です。
また余談ながらWW2当時英国は駆逐艦『アイヴァンホー』を保有しており、これを投入して「ウィルフレッド作戦」を実施したことがある。でも失敗した。(汗)
ロウィーナ・オブ・ハルゴットスタンドスティード
サクソン人の偉大な王の血を引く姫君であり、誰もが目を奪われる美人。幼馴染みのアイヴァンホーと恋仲。悪党に攫われたりと全力でお姫様をしているが、超美人という以外にあんまり描写のないパッケージヒロインの悲劇みたいな人。
クリスの名前に無理矢理ねじ込んだ(クリスティン・ロウィーナ)くらいであまり元ネタにはならなかった。クリスティンはどこから持ってきたんだっけな……。
アセルスタン・オブ・コニングズバラ
サクソン人。ロウィーナ姫ほどの血統ではないがこちらもサクソン人の王の末裔で、ロウィーナ姫と結婚してサクソン王朝を再興させて欲しいと(サクソン人の旗印になって欲しいと)期待されている。
ロウィーナ姫を巡るアイヴァンホーの恋敵……なのだがぼーっとした性格で、アイヴァンホーと敵対することもなくあっさりロウィーナ姫の意思を優先したり、敵に倒されたはずがあっさり自力で復活したり(一応騎士として強いという描写はある)、大食いだったりと、色々テンプレを外す人。藤春は登場人物の中でいちばん好きですが。
アセリアの名前の元ネタ。初期プロットではこの通りクリスの婚約者の騎士でしたが、諸々あって性別が変わって(笑)異母姉というポジションに。
セドリック・オブ・ロザウッド
サクソン人の地主。アイヴァンホーの父親にしてロウィーナ姫の後見人。ロウィーナ姫とアセルスタンを結婚させてサクソン人の国を再興させることを夢見ている。息子がロウィーナ姫と恋仲になってしまったことを知り、「お前が悲願を邪魔するとは何事かあああ!」とばかりにアイヴァンホーを勘当した。しかし追放した後に息子はさらに怨敵ノルマン人の王の臣下になってしまったので、やることが裏目に出がちなようだ。ただし出番は主人公のはずの息子並みに多い。ツンデレオヤジキャラが日本のものだけでないと思い知らせてくれる人。
ウルリカ・ヴォルフガング
セドリックの旧友の娘。長らく敵に囚われの身となっていたが、セドリックと再会したことで命を賭して反撃に出る。
元々は美女だったが、本編時点で既に老婆(!)。……いやほら元ネタといっても全部をそのまま持ってくるわけではないので……。
リチャード一世(リチャード獅子心王)
ノルマン人のイングランド国王。実在の人物。
英国史でも屈指の人気を誇る王様。物語中でも全身黒ずくめの鎧兜で『黒騎士』と名乗って馬上槍試合に乱入したり、弟ジョンの悪巧みを阻止するためこっそりイングランドに戻ってきて諸国漫遊記をやっていたりとやりたい放題。お陰でアイヴァンホーが「君も(ああいう主君を持つと)苦労するね……」と同情される、ちょっと笑えるシーンがある。
某暴れん坊将軍や水戸藩主様を地で行くが、史実におけるリチャード一世もだいたいそんな感じなので将軍様より質が悪い。自分の愛剣を「エクスカリバー」と呼んでいたというアレな逸話がある。イングランド王ではあるが在位中に国にはほとんど滞在せず、大陸での戦いに明け暮れた。
正直、主人公アイヴァンホーやロウィーナ姫よりよほど出番が多く、美味しいところの八割くらいを持っていく。上述のとおり逸話の多い王様なので、作者が書いているうちにノリノリになったんだろうなー……と藤春は生暖かく読んだ。
リカルドはリチャードのスペイン語読み。でも名前以外にそこまで共通項ないな。
ロビン・フッド
英国の伝説上の義賊。スコット自身の創作ではないという点においてこちらも史実の借用に近いか。
ロビン・フッド伝説は長い時間をかけて成立したものだが、19世紀以降に「弓の名手」「リチャード一世の時代の人物」などの設定がお約束として定着したようだ。
作者がノリノリになりすぎて(たぶん)主人公を食ったキャラその2。お忍び漫遊中のリチャード一世と偶然出会って意気投合し、弓の試合でその腕前を見せつけたり、攫われたロウィーナ姫やアイヴァンホーたちの奪還作戦に参加する。主人公の騎士が囚われのお姫様になる展開を藤春は生暖かく読んだ。
ロビンの元ネタだが、当然ながらロビン・フッド伝説に「実は女だった」とかいう設定はない。(笑)名前と弓周りの設定の原型ではありますが。
ブリアン・ド・ギルベール(ボア・ギルベール)
ノルマン人、テンプル騎士団(当時もっとも大規模な騎士団)の一員。物語における敵役の騎士。十字軍陣営の試合でアイヴァンホーに負けて以降、彼へのリベンジを誓っている。本編開始前にアイヴァンホーを裏切ったほか、王弟ジョンの一派としてロウィーナ姫その他を攫う悪巧みに荷担したりした。
敵役ではあるが必ずしも悪辣な人物ではなく、ある女性を一途に愛し、彼女を救うために勇敢に決闘裁判を戦うという見せ場がある。恋愛ドラマという点ではむしろ主人公ぽい。(笑)

名前の元ネタにした登場人物はこのくらいかな。

『アイヴァンホー』にはむろん、これ以外のキャラクターも多数登場するので、その中から主要なキャラもついでに紹介しておきます。

王弟ジョン
実在の人物。リチャード一世の弟であり、彼の死後にイングランド王となる。
英国で人気のない王様ダントツ一位(たぶん……)なので、どんなひどい扱いにしてもいいやと思われているらしく、『アイヴァンホー』に限らずたいてい悪役である。しかも小悪党ポジションなので余計に救われない。英国史において「ジョン」と名乗った王は彼一人なことからも人気のなさが伺える。
あだ名は欠地王、ないしは失地王。兄貴は獅子心王とかちょうかっこいい二つ名なのに……。長らく無能の代名詞のように扱われてきたが、最近の研究では見直されつつある。それでも名君とは言い難いらしいが。
レベッカ
ユダヤ人。ユダヤ人差別は現代に至るまで続いているが、中世イングランドもその例外ではなく何かと辛い目に遭っている。それでも心優しさを失わない美しい娘。負傷退場中のアイヴァンホーを甲斐甲斐しく看病し、また敵に一方的に惚れられて迫られるも屈しなかった。ちなみにその頃ロウィーナ姫様は特に何もしてませんでした。それで良いのかメインヒロイン。
アイヴァンホーに恋するが、宗教の違いと(ユダヤ教徒とキリスト教徒の結婚は認められない)、彼がロウィーナ姫と恋仲であることも知っており、想いを告げることなく潔く身を引いた。
読者人気はロウィーナ姫をはるかに上回り、英国の誇る文豪サッカレー(『虚栄の市』などの作者)などはレベッカ愛のあまり「アイヴァンホーがロウィーナ姫と別れてレベッカと結ばれる」という二次創作を書いてしまったという……。

その他細かい地名や人名などの出典は省略。あまり長々と続けても何ですし、ぶっちゃけ作者も覚えてません。(汗・必要になったその場で考えるから……)

そういえば一巻のあとがきで紹介した幼妻ゲッターもとい馬上槍試合の名手ウィリアム・マーシャルもまた同時代の有名人なのですが、『アイヴァンホー』には登場しません。きっと作者のスコットが幼妻属性を持たなかったのでしょう……あと登場させたが最後またアイヴァンホーの出番を食うのが目に見えてるし。(汗)

そういえばメインヒロインのアーシャだけは『アイヴァンホー』ではなくインドの大女優が元ネタです。初期案ではオリエンタル系の褐色肌美少女だったのでそれに合わせたのですが、後に設定変更、しかし名前だけはそのまま残る形になったのでした。

あけましておめでとうございます

2013/1/2

今年もどうぞよろしくお願いいたします。

現在作業が終わらないままタイムリミットばかりが迫っておりまして、正月? 箱根駅伝なにそれ美味しいの? といった状態になっております。箱根はニュースで結果だけ見てました。見たかったのに五区!(涙)
そんなわけで簡単なご挨拶で申し訳ありませんが、今年もたまに思い出して見に来ていただけると嬉しいです。

新刊発売!

2012/12/1

新刊『天帝学院の侵奪魔術師』が12/1にHJ文庫から刊行となりました。お見かけの際はどうぞよろしくお願いいたします。私自身はここ数日寝込んでいて書店に行く余裕がなかったので、もうちょい体調が戻ったら売り場を拝んできます。(汗)

天帝学院見本誌
見本誌をいただいたのでその画像をぺたり。(笑)

新刊発売に合わせて文庫公式サイトで紹介ページも作っていただきました。
天帝学院特設ページバナー

ちなみに関係者間での略称は『てんてー』でした。某ひだまりスケッチの作者にしてまどマギのキャラデザのお方のことではありません。(汗)
ついでに担当さんがブログに『天帝学院のDT』と省略して書こうとしたら、編集部で「ちょっと待てえええええ!?」と止められた(らしい)という出来事もありました。このタイトルを決めた時には、まさか毎週エレク様にときめくことになるとは思っていなかったもので……発売タイミングと偶然というのはなんと恐ろしい。まあ戦士の称号のことらしいので間違ってはいない気もするんですけどねDT。

企画が形になるまでが長くて、担当さんとああでもないこうでもないと悪戦苦闘しましたが、できあがってみれば好きなものを片っ端から詰め込んだ感じになっていました。(笑)お手にとって、少しでも楽しんでいただけましたら幸いです。

Copyright 2001-2014 Miyako FUJIHARU All Rights Reserved.
Powered by WordPress / Original Design: Template World